代襲相続の原因、欠格と廃除

代襲相続が生じる3つの原因

代襲原因は、ざっくりいうと、本来の相続人の代わりにその相続人の子(または孫、兄弟姉妹)が相続することをいいます(代襲相続についてはこちら)。

民法には、代襲相続が生じる原因が3つ定められています(民法887条2項)。

  1.  相続開始以前に死亡したとき
  2.  欠格事由があったとき(相続欠格)
  3.  廃除されたとき

死亡は分かりますが、「欠格」とか「廃除」とかって、どういうことなんでしょうか。簡単にいうと、「欠格」とか「廃除」は、どちらも、「相続人に対してひどいことをした人には相続させませんよ!」という制裁の制度です。どれだけ悪質かの程度によって、欠格と廃除に分かれます。

相続欠格とは

相続欠格というのは、「相続人の行動が悪質すぎる場合に法律上当然に相続権がなくなりますよ」という制度です。相続人の欠格事由について定めた民法891条によれば、次の①から⑤の人は相続人となることができないとあります。

① 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

② 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

③ 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

④ 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

⑤ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

 

①の「故意に」「死亡するに至らせ」たために「刑に処せられた」場合とかは、究極的に悪質だということが直感的に分かります。

⑤の場合はどうでしょうか。相続欠格でよく問題になるのが、民法891条5号にあたるかどうかです。たとえば、ハンコの押し忘れがあったから、相続が始まったあとで、相続人の一人が必要な場所にハンコを押してあげた場合とか。こういった場合も、偽造とか変造とかになっちゃうんでしょうか?ハンコを押してあげた相続人は良かれと思ってそうしたのに、それで「遺言書を偽造した!欠格だ!」とか言われちゃうと何かかわいそうですよね。

どんな場合に民法891条5号にあたるのかどうかは、別の記事で裁判の事例をいくつか紹介しますね。

廃除とは

廃除というのは、誤解をおそれずにいえば、「こいつには相続させたくない!」と思う人を「相続人からはずす」ことです。もう少し正確にいうと、相続欠格の場合ほど悪質ではないけれども相続人に著しい非行がある場合に、被相続人の意思で裁判所に請求して相続人の資格を失くす制度です。

廃除について定めた民法892条によれば、「虐待」や「重大な侮辱」、「その他著しい非行」があったときに、廃除の請求ができます。また、廃除は遺言でもすることができます(民法893条)。廃除は、被相続人の意思にもとづく制度なので、被相続人の意思で取り消すこともできます(民法894条)。

ちなみに廃除の対象となる相続人は、遺留分をもつ相続人だけです(遺留分のない相続人の場合は、その人の相続分を他の人にあげてしまえば済むので、廃除のような制度は必要ありません。)。


 

老齢の親が子どもと同居していて、子どもから虐待を受けていたというケースを見聞きしたりします。とても心が痛みますが、他の家族や親せきは遠方で一緒に暮らせない、経済的に苦しくホームには入れなかった、暴力を受けても親子だから心情的に強く言えないなど色んな事情があって、その虐待する子との同居を継続せざるをえない場合もあるようです。

家族のことなのでとても難しいとは思いますが、いよいよの場合は法律上の手立てがあります。心身が疲れ切ってしまう前に、誰か近くの人に相談してもらえればと思います。