遺言と相続の関係②
民法には誰がどれだけの割合で相続するかについて定めた条文がありますが、遺言書に法律に書かれた相続分と異なる内容が書かれていたらどうなるでしょうか?
前回の記事(こちら)に書きましたが、もし遺言があれば基本的には遺言の内容が優先されます。
今回は、その遺言と相続の関係について、より詳しく、より正確に説明したいと思います。「小難しい話はいいや」、「もうおなか一杯」という方は、読まなくて大丈夫です。
1.「遺言」、「相続」
相続とは、人が死亡したときに、その財産に属する権利義務を相続人に承継させることを言います。相続のさせ方には大きく2つのやり方があります。それは、①法定相続主義と②遺言相続主義です。
法定相続主義
①法定相続主義(ほうていそうぞくしゅぎ)とは、法律の決まりにしたがって、相続人に相続させるやり方です。
遺言相続主義
②遺言相続主義(いごんそうぞくしゅぎ)とは、亡くなる人の意思によって、自分の死後、誰にどのような財産をどれだけ残すかを指定して相続させるやり方をいいます(法律用語では遺言を「ゆいごん」ではなく「いごん」と読みます)。
一般によく使われている「相続」という言葉は、法定相続のことを指していることが多いです。
2.遺言と相続(法定相続)では遺言が優先する
人は自分の財産を自分の意思で自由に使うことができます(私的自治の原則)。それと同じように、自分が亡くなった後も、遺言によって自由にその財産を使うことができるんです(遺言自由の原則)。
遺言は、自分の財産をどう使うかについての自分の最後の意思表示です。だから、その遺言に表示された意思は尊重されなければなりません。
亡くなった人が有効な遺言を残していれば、その人の意思を尊重するためにその遺言の内容にそって財産をわけていきます。この遺言がなかった場合にはじめて、民法の決まりにしたがって相続されます。
そういうわけで、遺言がある場合は、法律で決められた相続のさせ方(法定相続)よりも遺言が優先するのです。
3.遺言でもできないことがある
遺言を残す場合は、誰にどのような財産をどれだけ残すかについて、原則として自由に決めることができます(さっきお話した遺言自由の原則です)。ただし、完全に自由なのではなく、一定の例外があります。
どんな例外があるかについては、そのつど別の記事で説明していきます。ここでは、「遺言でなんでもできるってわけではない」、ということだけ押さえてもらえたらいいです。