遺言書を見つけたら検認すべし

父の自筆の遺言書

父が亡くなってから1週間。初七日はお葬式の法要と一緒に済ませておいた。

ゆっくり悲しむ暇もなくて、本当にあわただしかった。父との思い出… 最近はゆっくり時間がとれなかったけど、去年両親を温泉に連れて行ったのが最後だったかな。
あまり長く休むわけにもいかないからとりあえず仕事にはいく。職場の人たちは色々と気遣ってくれて、申し訳ないやら落ち着かないやら。

心配なのは母のこと。父が入院してからは、あの家に一人になってしまうからって、母はグループホームに引っ越した。この間会いに行ったときは、何だかぼんやりしていた。もしかしたら認知症がでてきたのかも。父が亡くなって、母はがっくり気落ちしてしまった。

そんな母からの連絡。お父さんから遺言書を預かっているからって。それでさっき、父の遺言書を受け取りに行ってきた。

封筒の表には「遺言書」、裏には父の名前と「開封を禁ず。検認せよ。」の文字。

検認って何?私は何をすればいいの?

自筆証書遺言

「自筆証書遺言」(じひつしょうしょ いごん)というのは、遺言者が自筆で作成した遺言をいいます。

自筆証書遺言は、文字を書くことができれば誰でも作ることができるため、簡単で費用もかかりません。しかし、自筆証書遺言は、法律で決められた要件を満たしていないと無効になってしまいます(自筆証書遺言の書き方は別の記事で)。

家族や近しい人が亡くなって、その人が書いたと思われる遺言書が見つかった場合、どうすればいいでしょうか?

検認手続を家庭裁判所に請求

遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、相続開始後遅滞なく「検認」(けんにん)という手続きを家庭裁判所に請求しなければなりません。

検認手続きを請求する裁判所は、「相続を開始した地を管轄する家庭裁判所」です。相続開始地は、遺言者の住所地や居処地から判断します。もし、相続開始地がどこか不明な場合は、家庭裁判所や専門家に問い合わせるといいと思います。

それから、検認する前に遺言書が入った封筒を勝手に開けないでください。すぐにでも見たい気持ちは分かりますが、我慢してください。開封すれば、5万円以下の過料に処せられるおそれがあります。相続人全員が開封することに納得していてもダメです。

検認の申立てに必要なもの

検認の申立てに必要なものは、

  • 申立書
  • 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本

などです。あとは、費用として、遺言書1通につき収入印紙800円分、連絡用の郵便切手などが必要です。

インターネット検索で「裁判所 遺言書の検認」とキーワードに入力して検索すれば、家庭裁判所のページが出てくると思います。まずはこちらを参考にしてください。

検認の申立書の記入は特に難しいものではないので、専門家に頼まなくても自分で書くことができると思います(裁判所のサイトに記入例もあります)。

ただ、戸籍謄本などをそろえる必要があるため、相続人が複数いて本籍地がバラバラだとか、家族関係が複雑だとかいった場合には、集める手間がかかって面倒です。そういう場合は、専門家に相談した方が手間暇の面で楽かもしれません。

検認期日

検認の申立てがされた後、書類の内容等に不備がなければ、裁判所書記官から申立人と相続人に対して、「〇月×日に検認をしますよ。」といった検認期日の通知が郵送で送られてきます。

申立てから検認期日の通知までは、約 1か月ほどかかることが多いようです。検認期日には、相続人全員がそろう必要はありませんが、申立人は欠席できません。

検認手続で有効・無効は判断されない

検認は、遺言書の状態や内容をみて、その現状を調査し記録する手続きです。家庭裁判所が、遺言の方式に関する一切の事実を調査します。検認手続きで注意が必要なのは、あくまでも、現状を証拠として保存するための手続きであって、その遺言書が有効かどうかを判断するものではないということです。

ちょっと分かりにくいですが、検認は「レントゲンを撮るだけ」とイメージしてみたらどうでしょうか。レントゲン検査の結果をみてはじめてどこが悪そうだとかの診断ができるのであって、レントゲン写真を撮っただけでは、健康であるという風にはなりませんよね。あくまでも、今の状態を確認する手続きなんです。

繰り返しますが、検認手続きが完了したからといって、その遺言書が有効だという風にはなりません。もし、自筆証書遺言の有効性に争いがある場合には、すべて訴訟で決着をつけていくことになります。その時には、弁護士に依頼するのがいいでしょう。

検認済証明書を用意して遺言の執行へ

検認手続きが終わったら、裁判所の書記官が検認の調書(遺言書検認調書)を作ります。それから、検認期日に来なかった相続人に対しては、「検認が終わりました。」という通知がきます。

遺言の執行をするためには、その遺言の検認済証明書が必要です。忘れずに、検認済証明書の申請もしてください。


 

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

最近は「終活」という言葉をよく聞くようになりましたね。自分の最期のことも自分できちんと準備しておきたい、という人が増えてきたように思います。そうしたことから自筆証書遺言を書かれる方も多いと思いますが、実は、法律の要件をきちんと満たしていないと無効になってしまう、という怖い面もあるんです。

自筆証書遺言の書き方については、別の記事でご説明したいと思います。

 

さて、今日のおやつは… 冷凍庫にはいっていた「パリパリバー」。バニラアイスの中に存在するチョコレートのパリパリ感がお手軽に楽しめる、森永製菓の商品です(詳しくはコチラ)。

ところで、みなさん「ビエネッタ」というアイスをご存知ですか?私が小さい頃、このビエネッタを食べたことがあって、その味と食感に感動したのでした。このビエネッタ、高級アイスという認識なんですが、今はどうなんでしょう…(今調べたら、ビエネッタも森永製菓!)。あぁ、今度ビエネッタを食べたいなぁ。

 

【まとめ】
① 自筆証書遺言は勝手に開封してはいけない。家庭裁判所での検認が必要。

② 検認はあくまでも遺言書の現状を記録する手続き。有効・無効は判断しない。

③ 検認調書や検認済証明書があれば、遺言の執行が可能になる。