葬式代の用意、4つの方法

葬式代は誰がだす?

昨日、父が亡くなった。

病院の先生には「週末が山です。」と言われていたから、覚悟はしていたけれど。私の職場の方にはしばらく休めるように連絡はしておいたからいいとして。弟もさっき職場に連絡していたみたい。

まず、お通夜とお葬式。喪主は私…かな。しっかりしないと。

えっと、お寺さんに連絡して…それから、お金はどうしよう。たしか、相続とかの手続をしないとお父さんの口座からは出せないのよね。とりあえず私が立て替えておくしかないのかしら。弟と相談しなきゃ。

銀行口座は凍結される

お葬式の費用は、誰が負担しますか?

「自分の葬式代くらいは自分で用意したい。子どもに迷惑をかけたくない。」と十分な額を銀行口座に用意してある方もいらっしゃると思います。

しかし、実は、口座にお金をいれているだけでは準備は足りないのです。

人が亡くなると相続が開始して、その人の財産は相続財産となります。そして、故人が生前に遺した財産は、相続人や縁故のある人に分けられていきます。その手続きがきちんと完了するまでは、相続財産が勝手に使われたりしないようにしなくてはなりません。

 

銀行の預金でいうと、口座名義人が亡くなったという事実を銀行側が知ったときは、その口座は凍結されて、預金の預入れや引出し、振替えなどができなくなります。口座の凍結を解除するまでは、そのお金を使うことができないのです。(従来は、預金債権は法定相続人に当然分割されると考えられてきましたが、2016年(平成28年)12月19日、預貯金は遺産分割の対象に含まれるという最高裁判決が出されました。詳しくは別の記事で。)

 

故人の預金はすぐには使えないため、お葬式の費用の支払いに間に合わない可能性があります。そうすると、結局は遺された家族が一時的であっても費用を負担しなければならなくなります。

亡くなったご本人としては、十分なお金を遺したと思っていても、口座においたままではすぐに使えません。自分の葬式代は自分で用意しておきたい人にとって、こうした不都合を避けるためにはどうすればいいのでしょうか。

葬式代の支払いに間に合うように

お葬式の支払いに間に合うように費用を用意するためには…例えばこんな方法があります。

  1.  事前に家族に預けておく
  2.  葬儀保険をかけておく
  3.  銀行で払い出しの手続きをする
  4.  公正証書遺言を残しておく

1つずつ説明していきます。

1.事前に家族に預けておく

事前にある程度の現金を葬式代として家族に預けておくことができれば、その方法が一番簡単だと思います。実際に、かなり高齢になった親御さんから子どもが葬式代を預かっていたというケースはよく聞きます。

しかし、急な病気や事故で亡くなってしまった場合や若くして亡くなられた場合は、こういった事前の準備はできません。

2.葬儀保険をかけておく

葬儀のための保険をかけておくことも1つの手立てだと思います。

生命保険は保険金が支払われるまでに時間がかかることがあるため、生命保険ではお葬式の費用の支払いに間に合わないこともあります。そういった点をカバーするために、保険金の支払いを早くして葬儀費用の支払いに備えるタイプの保険があるようです。

ただ、この方法も事前に保険に加入していないといけません。

3.銀行で払い出しの手続きをする

口座名義人が死亡した事実を銀行側が把握すると、その口座は凍結されます。誰が何をどれだけ相続するといった話し合い(遺産分割協議)がまとまり、口座凍結を解除するまではその預金の引き出しなどはできません。

ただ、遺産分割確定前でも、銀行で一定の手続きをすれば、葬儀費用などの引き出しに応じてくれる場合があります。

もっとも、銀行での手続きには必要な書面がいろいろとあるため、手続きが面倒だと思われる人もいると思います。それに、必ずしも銀行が払い出しに応じてくれるとは限りません。

4.公正証書遺言を残しておく

遺産分割協議が完了すれば、凍結された口座を解除することができます。ということは、遺産分割をできるだけスピーディにすればいい、ということになります。

公正証書遺言は自筆証書遺言と異なり「検認」(けんにん)手続きがいらないため、速やかに遺言執行手続きに入ることができます。

また、公正証書遺言の中で遺言執行者も指定しておけば、円滑かつ迅速に遺言の内容を実現できます。

こうした方法も対策の1つといえるかと思います。公正証書遺言の書き方については、別の記事で説明します。

せめてお金の心配だけでもなくしたい

さて、私自身は喪主の経験はないのですが、私の親が喪主をする姿は見ていました。

亡くなる直前のこと。もうそろそろ危ないぞという時に親戚中に連絡をしたり、家の片づけをしたり、仕事関係にもご迷惑をかけないように連絡や手配をしたり。

そして、身内が病院に集まって、最期を看取る。悲しむ暇もなく、葬儀社の方との打ち合わせ。お寺さんへの連絡、お通夜とお葬式の日程・場所、遺影の写真はどれにするか、祭壇、お花、お棺のこと、香典返しやお料理など…。本当に準備すべきことがたくさんあります。

自分の親をおくるときは、どうすればいいだろうか。そんなことを考えながら、この記事を書いています。

「その時」がきたら、せめて費用のことは心配しないで済むように、できる準備はしておきたいなと思います。